木曜コラム「公務員の仕事」第23回(4)長期計画に住民の意思を反映する方法

 前回の投稿では長期計画作成のための審議会の審議プロセスまで話をしました。しかし、重要な話がまだ残っています。それは、長期計画に住民の意思を反映する方法です。

 長期計画は公共サービスの根拠となるもので、その財源は住民の税金です。そして、選挙によって執行機関や議事機関が形成されている以上、長期計画には住民の意思が反映されている必要があります。審議会そのものは市民が選ぶ組織ではないため(学術会議のように首長によって任命される、という点では民主的統制がとられているとは言えますが…)、長期計画の作成を審議会で進める際に、住民の意思を組み込むことが重要になります。

 幾つかの方法があるので、プロセスで早くとられる順に紹介しましょう。まずは、住民アンケートの実施です。これは以前の投稿でも紹介しましたように、住民の意識を住民に直接尋ねるもので、数千人単位の大規模な調査になります。これによって住民がどのようなまちづくりを望んでいるかが明確になり、その結果に基づいて長期計画のたたき台が職員によって作成されることになります。
 次に、審議会のメンバー構成です。多くのメンバーは学識経験者や各分野の代表者などですが、ここに公募による一般住民が数人加わります。広報紙などで募集がかけられ、長期計画に対する強い関心や一定の識見を持った方が応募されるので、その中から適切な方を選んで審議会に参加してもらいます。これらの方が住民の代表と言えるかもしれません。ただし、それを個人にお願いするのは大きな負担をかけてしまいますので、住民ならではの感覚と広い視野で長期計画を見ていただき、意見を述べていただく形になります。実際、公募委員の方々は、なかなか気づかない点をズバッと述べてくださることが多いように思います。


 続いて、議会への説明です。議会は長期計画の作成を直接行う主体ではありませんが、議員は選挙を通じて選ばれますし、予算や条例などを議決する重要な存在です。長期計画に掲げられた事業も将来の予算になると言えるので、適宜議会に報告されます。また、自治体によっては長期計画そのものを議決の対象としているので、その場合は長期計画に議会が正式なお墨付きを与えることになります。


 最後に、パブリックコメントの実施です。これは長期計画がほぼ出来上がった段階で、住民に意見を募集する制度です。一定期間内に住民が自由に意見を述べることができます。その中から検討すべき意見があれば、長期計画の見直しなどを行います。また、いただいた意見に対する回答などを示すこともあります。住民にとって関心が高いものもあれば、そうでないものもあるので、パブリックコメントで多くの意見が寄せられることもあれば、ほとんど意見がないこともあります。


 このように、基本的には審議会を中心に長期計画の作成が進められるのですが、住民の意思を反映する仕組みもさまざまな形で組み込まれています。したがって、実質的には長期計画に住民の意思が反映されていると言っても良いと思います。

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