月曜コラム「公務員への道」第26回:最初の動機は「楽に仕事をしたい」でも構わない

 私が大学で担当する講義では、公務員を目指す学生の受講が多くあります。その動機を率直に聞いてみると、「公務員は仕事が楽だから」「公務員の身分保障があって、一生安泰だから」と言う声が多く聞かれます。もちろんそれは正しい部分とそうでない部分があり、授業でも私の経験を踏まえて公務員のリアルな仕事現場を伝えています。

 また、興味深いことに親が勧めたい職業のランキングでも公務員はきわめて高く、さらに結婚したい相手の職業でも公務員の人気は非常に高いです。さらに、住宅ローンの審査や賃貸住宅への入居などに際しても、公務員への信頼が厚いことから何となく得した気持ちになることもあります。

 こうした現状から、「公務員になりたいという動機が不純だ」「公務員の質の低下が心配だ」などと言う声も聞かれます。確かにこうした動機だけでは、このような懸念もやむを得ないところです。しかし、むしろこのことがプラスに働くこともあります。
なぜならば、最初からあまりにも強い熱意を持つと、かえって公務員の仕組みに合わないところが出てくるからです。

 公務員は国も地方も数年おきに異動を繰り返していきます。特に地方公務員の場合は福祉から税務へ、教育から環境へ、といったように、まるで転職のように分野の異なる仕事をトップからの指示で否応なくしなければならない、という特徴を持っています(今後、民間企業がメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ転換していくことによって、公務員も特定の仕事を専門的にこなす形が普及してくるかもしれませんが…)。

 したがって、「自分は公務員になってこの分野で活躍したい」という熱意を強く持っていると、そうした部署に所属しない時期も多くあることため、かえって仕事への熱意を失ってしまうこともあるのです。むしろ、自分がどんな仕事につくのかわからないことを楽しめるくらいの余裕があった方が良いこともあります。私の場合も、仕事にそれほど強いこだわりがなく、実際に所属が決まってから楽しい部分を見つけていきました。振り返ってみると、これが良かったのではないかと思います。

 なお、採用試験の面接では志望動機等が聞かれます。その時に、どのくらいのトーンで動機を伝えるべきかが悩ましいところです。「特定の仕事をバリバリこなしていきたい」という動機では、採用する側は「それには応えられない」となってしまうでしょう。逆に、あまりにも曖昧な動機では「本当にやる気があるのか」という疑念も湧いてしまうからです。

 このあたりは、別の機会で述べてみたいと思います。

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