市役所のインターンシップも3日目を迎えた。1週間の仕事で言えば水曜日だから、ちょうど真ん中になる。大学は水曜日が休みなので連続して行くのはだけだが、社会人は月曜日から金曜日まで5日連続、しかも朝8時半から夕方5時過ぎまで、規則正しく働く(そうでない部署もあるが…)。少し疲れてきた感じもするが、何とか乗り切っていこう。そう考えながら、市役所に向かった。
2日間で税務課と財政課を体験し、いずれもお金を扱う部署だが仕事の内容やペースが全然違うことに驚いた。さて、今日はどの部署を体験するのか…、期待と不安の交じる中、市役所に向かった。
あらためて朝の光景を観察してみた。市役所は8時半にスタートする。私は8時15分頃に来ているが、やはり多くの職員が出入りする時間のようだ。早い人は7時半頃に来ているらしい。朝ゆっくり過ごしたいと考える人や、早めに仕事を始めて夜は残らないようにする、ということだろう。もちろん8時30分ギリギリに来る人もいる。特にルールはないようで、8時30分には全員が仕事を始められる状態になっていれば良いようだ。もちろん遅刻は厳禁だ。
井上さんが私のところに来て、声をかけてくれた。
井上「おはよう。もう3日目だけど、どう?疲れてない?」
私「おはようございます。本当にあっという間に日が経ちますね。疲れは少しありますが、大丈夫です。それよりも、いろいろな仕事が体験できているので、今日もどんな仕事を体験できるのかワクワクしています」
井上「いいね。やっぱり仕事は楽しくないとね。今日は、女性活躍課に行ってみよう。今、一番注目されている部署だと思うよ。」
私「はい、楽しみです。」
そう言って、女性活躍課に行った。この課は市役所の中にはなく、女性活躍センターという施設の中にあるようだ。市役所から車で10分ほどの場所にある。行ったことはないけれども、センターがあることは知っていた。
センターに到着し、女性活躍課長に挨拶した。課長は女性で、優しそうだ。課の雰囲気にも優しさが溢れている感じがする。そういえば、施設のところどころに可愛らしい飾りがたくさんあったし、女性の活躍を伝える壁新聞が貼ってあった。女性が来ると元気になれそうな感じがする。雰囲気づくりも大切だ。
今日は朝から会議があるようだ。外部の有識者や女性団体のトップ、企業の人事担当者が集まり、女性活躍の進捗状況や課題を議論するらしい。会議室の机と椅子を並べ、席に資料や名札、お茶などを並べて準備を整えることになった。職員が慣れた様子でテキパキと準備しているのを見ながら、自分も手伝った。
会議の15分ほど前に座長が到着して、びっくりした。私の通っている大学のゼミの先生だ!。インターンシップに行くことは先生にも報告していたので、先生に挨拶した。
私「おはようございます。まさか先生も市役所に来ているとは知りませんでした。たまたまこの会議に同席することになりますが、先生がいると安心します。今日はよろしくお願いします。」
先生「やあ、頑張ってるね。今日の会議は面白いことになりそうだから、よく見ておいて、後で感想を聞かせてね。」
私「分かりました、楽しみにしています。」
先生は座長として、会議を進行する役のようだ。職員と細かい進め方を打ち合わせしている。会議のメンバーの方々も少しずつ集まり始め、各々の座席に座っていった。課長や職員も「お忙しい中ご出席ありがとうございます。本日はよろしくお願いします」とメンバー全員に挨拶していた。
さらに、新聞記者とテレビカメラも入ってきた。会議はマスコミにも伝えられていて、今日は5社ほど来ていた。マスコミ用の座席も用意されている。夕方のテレビニュースと明日の朝刊で報道されるようだ。自分もテレビに映るかもしれないと思うと、ドキドキした。
そうこうしているうちに会議が始まる時間になった。課長の挨拶と進行でスタートした。
課長「ただいまから、女性活躍推進会議を始めます。本日は、お忙しい中ご出席いただき、ありがとうございます。ここから先は、座長に進行をお願いします。」
ここで座長の進行に切り替わった。座長は用意されたシナリオを見ながら会議を進めている。会議次第によると、議題は2つあった。座長も簡単に挨拶した後、すぐに最初の議題に入る。議題に関する内容を課の職員が資料に基づいて説明した。その後、メンバーとの意見交換に入る。メンバーからの質問に対しては、担当の職員が的確に答える。事前に質問をイメージし、大切なところは付箋で印をつけていたようだ。
女性活躍のことは、ゼミで先生から話を聞いていた。国の主導で進められているが、なかなか進展していない。自治体も国の方針に沿って女性活躍の推進計画を策定し、関係者とともに取り組んでいる。今回はそれぞれの進捗状況や課題を報告してもらい、市に求められる取り組みなどを議論する会議であった。
市でも女性管理職の登用や男性の育児休暇取得、ワークライフバランスの推進など、さまざまな女性活躍の取り組みを進めている。女性活躍課長も、市全体で女性活躍を進めるだけでなく、自分自身が女性として活躍することを期待されているに違いない。多くのマスコミが集まっていることから、やりがいもありそうだがプレッシャーも大きそうだ。
2時間ほどで会議を終え、座長のまとめと課長の挨拶で幕を閉じた。課長が座長の先生にお礼の挨拶をした後、私も先生に挨拶した。
私「先生、今日はお疲れ様でした。明日、授業なのに先生も大変ですね。」
先生「これも社会貢献の大切な仕事だからね。もちろん、現場の貴重な情報を知ることができるから、講義でも時々話しているよ。ゼミで言ったこともその一部だ。」
私「そういえば、去年の講義でもまちづくりの話をしていましたね。あれもそうだったんですか?」
先生「そうだよ。自治体から頼まれる仕事のことを講義でも話すと、学生にも身近で分かりやすいから」
井上「私もそう思います。先生も大変ですね。大学に戻ったらインターンシップの報告に伺います。」
そうして、会議のメンバーや座長の先生はセンターを出ていった。私は会議室の机の配置を元に戻した。時間は、そろそろお昼になるころだ。井上さんに話しかけた。
私「今日みたいに市民の方と会議をすることも多いんですか?」
井上「そうだね。最近増えているんじゃいかな。市だけで進められない分野も多いから、市が間に入って関係する企業や人と一緒に進めていくことになる。そうした分野には皆で情報の共有や意見交換をする必要があるから、こうした会議が必要なんだ。女性活躍は、その典型だろうね」
私「市役所が住民に一番身近な行政機関で、人の顔が見えるのが良いと思っているので、とても魅力的に感じます。」
井上「そうだね。市役所が身近な存在だからこそ、こうした会議も多くなることは間違いない。貴重な経験ができて良かったね。」
私「はい、ありがとうございます。午後からも頑張ります!」
そう言って、午前中の体験を終えた。
→次回の話を読みたい方は、こちら「出先機関の仕事環境は、やっぱり本庁とは違う?」