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 今日はたくさんの初体験があって楽しかったけれど、朝から緊張感が続いてもいたので、やっぱり少し疲れた。帰宅の途中でコンビニに寄って、スイーツと缶ビールを買った。ちょっとだけだが、自分へのご褒美だ。

 今日は定時の5時15分には市役所を出たので、6時前には帰宅できた。都内の大都市とは違って、通勤が非常に楽なのは嬉しい。帰ってからもゆっくりと自分の時間が過ごせそうだ。

 でも、井上さんを始め、先輩職員の方はまだ帰れない様子だったので、ちょっと不安になった。自分はインターンシップだから早く帰れるだけで、職員になれば残業も多くなるのかもしれない。そうだとすれば、自分の時間がなくなってしまう。市役所は早く仕事を終えられると思っていたのに…

 少し暗い気持ちでビールを飲みながら、とにかく明日に疲れを残さないよう早めに寝た。

    …

 翌朝は7時過ぎに起きた。長く寝たのでスッキリできた。普段は深夜まで起きて10時頃まで寝ていたので、社会人の生活って規則正しくなるんだな、責任感もあるから自然にそうなるのかな、などと思いながら支度を済ませ、市役所に行った。

 インターンシップに参加した学生が集まり、昨日のことをいろいろ話していた。「楽しかった」「ちょっと違う感じだった」反応はさまざまなようだ。自分は大変だったけど楽しかったので、どちらかと言えば良い経験ができた方だった。先輩が良かったのかもしれない。

 井上さんが迎えに来てくれた。

 井上「おはよう、昨日はよく眠れたかい?」

 私「おはようございます。おかげさまでよく眠れました。でも、ちょっと不安に思ったこともあって…」

 井上「どんなこと?差し支えなかっから、聞かせてくれる?」

 私「残業って、結構多いんですか? 私はインターンシップだから定時で帰れましたけど、井上さんはその後も残っていましたよね? 他の人も何時頃まで仕事しているんだろう、もしかしたらブラック職場なのかも、と思うと不安になってきて…」

 井上「確かに、僕は残ったよ。霞が関でも深夜まで残業しているって報道されているからね。市役所も同じだと思ったのかな?」

 私「そうです。やっぱり公務員はワークライフバランスがしっかりしていることも魅力だと思っているので…。反対にブラック職場だったらどうしようと思って…」

 井上「なるほど。ちなみに、僕は昨日、7時過ぎまで仕事していたよ。だから、2時間くらい残業したことになる。昨日受け付けた確定申告の書類を整理して、今日の準備をしていたんだ。日中はなかなかできないから、残って皆で作業したんだよ。」

 私「そうなんですね。2時間くらいならそこまで多くはないですね。」

 井上「そうだね。なるべく残業しないで済むように、皆で頑張っているんだ。7時だとだいたい夕食の時間でしょ? それまでに済ませれば、家で夕食が取れるよね。逆に、それ以上に残業すると、出前を取ったり夕食を遅くしたりしないといけない。もったいないし、生活リズムも乱れてしまうから、残業は7時までと上司が決めているんだ。その方が仕事にも熱が入るし、最初から長時間残業だと思って仕事するとダラダラするだけだから、あまり良くないんだ。上司が決めてくれると助かるよね。」

 私「それを聞いて安心しました。」

 井上「でも、部署によって全然違うんだ。忙しい時期もバラバラだし、残業時間が多いところもあるよ。10年前にいた部署は、1月から3月までは毎日深夜まで残業していたから、大変だったよ。」

 私「えっ、そんなところもあるんですか?」

 井上「そんなところばかりでもないけどね。本当に部署によってバラバラなんだ。」

 私「全体的に、市役所は残業が多いと思いますか?」

 井上「確かに残業はあるけど、それほど多いとは思わないよ。もちろんブラック職場でもないある程度自分でコントロールすることもできるんだ」

 私「そうなんですか?そうすると、自分が頑張れば残業しなくて済みますね?

 井上「市役所の仕事は、個人に割り当てられているものと皆で力を合わせてするものがある。個人の仕事は自分次第だから、頑張れば残業しなくて済むし、今日は残業したくないと思ったら翌日でも問題ない。期限に間に合えば良いからね。皆で力を合わせてするものは全員が残って仕事するから、昨日の確定申告も7時までと上司が決めて残業したんだ。毎日定時というわけにはいかないけれど、残業が多くて大変だとは思わないよ」

 私「でも、部署によっては深夜まで残るんですよね」

 井上「確かにそうだけど、1つ救いがある。それは、終わりが見えていることなんだ。あの時は「3月まで頑張れば後は楽になれる」と分かっていたから、「それまではしっかり頑張ろう」って思いながら仕事していたんだ。新型コロナでも自粛疲れとか言われていたけど、いつまで続くか分からないから余計に疲れてしまう終わりが見えれば、そこまで何とか頑張ろうって切り替えられるんだ。市役所の仕事は1年間のなかで忙しい時期とそうでない時期が事前にだいたい分かるから、忙しくない時期に旅行とか休みをとって充電しておけるし、残業が続いても終わりが見えているから頑張れる。」

 私「なるほど。残業がほとんどないと思っていたので、ちょっと意外ですけど、何とかなりそうですね」

 井上「そうだね。残業はあまり気にしなくて良いと思うよ」

 私「ありがとうございました。不安がなくなって、スッキリしました。今日もよろしくお願いします。」

 こうして、次の部署に向かうことになった。次はどういう仕事が待っているのだろうか、不安もあるが期待の方が大きかった。

次回に続く…

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