私がこれまで見てきた大学生は、4年間で大きく成長していきます。それは教員をしていると、とてもよく分かります。特にリクルートスーツを着る時期には、就活の準備や緊張感などもあり社会人になるという意識が一気に芽生えてきます。

 その中で、公務員を目指す学生は、やや特殊な状況下に置かれています。大学に入学した段階で公務員への就職をイメージしている学生は多いです。その多くは親や親戚に公務員がいたり、親から公務員を勧められた学生です。なので、公務員をめざす学生は比較的早い時期から少し就職を意識しているように思います。

 しかしこれが意外と曲者(クセモノ)です。最初のうちは試験勉強が必要と分かっていても、まだ勉強を始めるわけではありませんが、3年生あたりから勉強を意識し、始めていきます。しかし、公務員試験は大学受験と違って周りの学生がほとんど受験するわけではないので、公務員をめざす学生は勉強への負担を感じるようになります。正直、「なぜ自分だけ苦労しなきゃいけないの」「私ももっと大学生活をエンジョイしたい」という気持ちにもなるでしょう。

 よく分かります。そして、それが積もり積もって「もうやめた」と受験を断念する学生が実際にいます。勉強のモチベーションが続かないのです。

 もちろん大学生活でいろいろな授業やサークル・アルバイトなどを経験して、別の分野に興味を抱く学生もたくさんいます。それは前向きなことですから、大変良いことだと思います。しかし、「試験が大変だから」と言う理由で公務員を断念することは残念です。「公務員になりたい」という思いを持ち続けているのであれば、勉強へのモチベーションを保持する必要があります。ですが、それも容易ではありません。

 そこで、私は3つの方法を提案します。1つ目は、できるだけ効率的に勉強することです。余計な負担をかけず、学生生活もある程度エンジョイしながら勉強を続けることはできると思います。このサイトでもその方法を少しずつ紹介していきたいと思いますし、勉強法の本もたくさん出ていて参考になります(大学受験の勉強法を書いた本も多くあり、有益です。テレビの東大受験企画やコミック「ドラゴン桜」なども面白いです)。

 2つ目は、公務員をめざす仲間を増やすことです。公務員試験の予備校に通う大きなメリットもここにあると思いますが、もちろん独学の学生も大学の内外で仲間を見つけることができるでしょう。大学によっては、公務員試験サークルなどのような団体もあります。みんな苦労していますし、彼らはライバルというよりも仲間(同志)です。心が折れそうになった時は、みんなで分かち合うことでモチベーションが回復します。

 3つ目は、自分がなりたい公務員の仕事をイメージすることです。試験勉強は確かに大変ですが、苦労の後には大きな喜びが待っています。大学を卒業してから定年まで、40年以上も勤めることになります(公務員の定年は60歳から65歳まで延長される見通しです)。たった1年の勉強で、40年以上の仕事が決まるのです。そう考えると公務員試験の勉強は大学受験よりもはるかに重要と言えるかもしれません。1年間の苦労は絶対に報われます。私自身、また私の周りの公務員も同じ思いを持っていると確信しています。

 私の講義も、公務員の仕事を身近に感じられるよう工夫しています。現役の公務員の方にゲストに来ていただいたり、こちらから学生を連れて職場を訪問することもあります。公務員の方も、みんな情熱を込めて学生に語りかけてくれます。あるいは、市役所などは誰でも入れますから、用事がなくてもふらっと覗いてみるだけでも仕事の雰囲気が掴めると思います。

 試験勉強の間に、いろいろな気持ちの浮き沈みがあると思います。公務員試験を受けるか受けないかにかかわらず、就職の不安は誰にでもあります。不安になった時は「今はそういう時期だ」と、素直に受け入れた方が良いと思います。不安になる、プレッシャーがかかるということは、自分が合格できる可能性があるからです。オリンピックの金メダル候補でも、メダルの可能性が高いほど不安も大きいはずです。また、スランプに陥ったスポーツ選手は、ひたすらランニングやトレーニングをして脱出するのを待つ人も多いと聞きます。どんなに努力している人でも不安に陥るのは同じです。

 モチベーションを保つのは確かに大変ですが、ここに紹介した3つの方法を参考にして皆さんも不安を乗り越え、試験に合格してほしいと思います。