公務員試験で最も重要なのは、第一志望というターゲットを絞り込むことです。私は日頃、公務員を志す大学生と接しているのですが、公務員として仕事をしているイメージを強く持っている人ほど、試験の負担を乗り越えて合格を勝ち取るように思います。逆に言えば、それだけ公務員試験の負担が大きいと考えられているのです。

 勉強が好きな人はおそらく多くないでしょうから、大きなモチベーションが不可欠になります。それでも、公務員試験の勉強は「したくない」「でも公務員になりたい」という気持ちを交互に繰り返しながら苦労して勉強を続け、本番を迎えていくことになります。しかし、残念ながら「もう無理」と、途中で断念してしまう人も多くいるのが現実です。

 本人の前向きな選択で勉強をやめるのならば良いかもしれませんが、仕方なくあきらめてしまうことは残念です。私は、少しでもそうした人が少なくなるよう、学生にさまざまなメッセージを発しています。

 そこでまず、大学生が公務員試験の勉強をあきらめてしまう理由を考えてみましょう。大学受験と公務員試験の比較から次の3点が挙げられると思います。

 ①大学受験を終えたのに、公務員試験のためにさらに受験勉強をしなければならない

 大学受験の負担は公務員試験と比べれば大きいと言えるでしょう。しかし、だからこそ大学生活を楽しみたいと思い、「もう勉強はこりごり」「大学で楽しく過ごしたい」という気持ちになります。公務員を志望する人は大学受験の記憶も勉強習慣もほとんどなくなった3年生の夏休みごろから再び受験モードに入らなければならいので、大きな負担となるのです。

 ②学校の授業と公務員試験の問題が直結しない

 大学受験では、高校での授業が受験対策に直結していました。文系・理系の区分や受験する大学・学部によって、クラス分けや受ける授業の科目が決まります。しかし、大学の授業は公務員試験に直結していません。確かに、法学部や経済学部の授業が公務員試験の対策になることはあります。しかし、大学の授業は学問の基礎や実践への応用を指導するものですから、公務員試験の対策は大学の授業とは別に自分で行う必要があります。これも負担になるのです。

 ③民間企業をめざす大学生が圧倒的に多いので、公務員試験対策をすると損した気分になる

 これが最も大きな負担になると思います。大学受験では周りが見な勉強するので、自然に勉強する環境になっています。しかし、大学では民間企業をめざす学生が多く、彼らは公務員試験のような勉強をしません。また、民間企業は早く内定が出ます。なので、「自分だけ勉強しなければならない」「友達はもう内定が出ているのに、自分だけ不安な気持ちで勉強を続けなければならない」という気持ちになります。これは非常に大きな負担となるでしょう。

 しかし、確かにその通りなのですが、公務員試験は社会人としての約40年間を決めるための勉強です。大学の4年間を決めるための勉強に比べれば、圧倒的に重要なことは明らかでしょう。私自身、公務員試験の勉強は大変でしたが、公務員になってから得た貴重な経験を振り返ると、「勉強して良かった」と心から思っています。

 「公務員試験に合格したら何を得られるのか」「それを自分がどれほど望んでいるのか」を考えることが勉強の動機になるのです。40年の公務員生活をイメージしてみるとことが、最強のモチベーションをもたらしてくれるでしょう。

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