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 会議を終えて片付けを済ませると、昼休みになった。ここは女性活躍センターだから職員の数も少ないし、市民も多く訪れるから、昼のチャイムはならなかった。時計を見て、各自で休憩をとっているようだ。

 会議に参加していたので気がつかなかったが、建物が大きな割に職員の数は少ない。市役所は住民サービスのために職員が仕事をする場所だから、基本的にオフィスだ。もちろん住民票の交付や保育園の手続きなどで住民も訪れている。しかし、それも1・2階のフロアだけだ。昨日体験した財政課などは住民と直接コミュニケーションをとることはなく、むしろ、公表する前の資料なども扱うので「ここから先には立ち入らないでください」と入り口に書いてあった。市役所も大きな建物だが、基本的には職員のオフィスであり、多くの職員が所狭しと机を並べて仕事をする。その分、とても賑やかな雰囲気があった。

 しかし、女性活躍センターは、大きい建物の割に職員が8人しかいない。オフィスが大きいわけではなく、ほとんどが会議室やホールなどだ。ここで会議やイベントなどが行われ、主に住民が使っている。平日の朝は会議やイベントも少ないので、ガランとした雰囲気になるのだ。

 井上さんに聞いてみた。

 私「市役所と比べると職員の方が少なくて、少し寂しい雰囲気ですね」

 井上「出先機関は住民のための施設だからね。平日の午前中はだいたいこんな感じだよ。でも夜とか休日は住民で賑わうよ」

 私「そうなんですね。そうすると、職員も夜や休日は仕事があるんですか?」

 井上「まず、休館日は多くの施設で月曜日なんだ。土日は施設が開いているから、職員も出勤するよ。また、平日も夜9時まで開いているから、仕事がある。女性活躍課の仕事は女性活躍のための政策を企画立案して実施するところだけど、このセンターも管理しているから、施設が開いている時間は仕事になるんだ」

 私「大変ですね。それでは週休2日にならないんですか?」

 井上「それは大丈夫。土日が休みにはならないけれど、月曜日と他の曜日を組み合わせて週休2日にしている。連続にならないこともあるけれど、平日が休みになるメリットもあるよ。また、夜遅くまで残る時は午後から出勤することになる。そうして、市役所と同じ労働時間になるようにしているんだよ」

 私「そうなんですね。平日が休みだとどんなメリットがあるんですか?」

 井上「賑わうところは土日はどこも混んでるから大変だけど、月曜日は空いてるでしょ?だから、混雑に遭わなくて済むってことだね。例えば、ディズニーランドが好きなら、月曜日が休みの方が良いんじゃない?」

 私「確かにそうですね。もう1つ教えてください。センターは職員が少ないですが、寂しくないですか?」

 井上「うーん、確かにそうだね。でも、これも考え方次第だよ。職員が少ないメリットもある。例えば、コミュニケーションが密になるよね。集団が小さいから、いつもコミュニケーションが取れて、団結力も強くなる。それと、人が多いといろいろな情報が飛び交うから、面倒なことが起きる時もあるんだ。ここではそうこともが少ないから、仕事はしやすいよね。寂しいと言えば寂しいのかもしれないけれど、むしろ仕事はしやすいと思うよ」

 井上「もちろん、住民とのコミュニケーションも多い。職員は少ないけど利用者は多いから、お互い気軽に話しかけることもできる。どんな人が施設を使っているか、施設に満足してくれているかを利用者から聞くことも大事な仕事だし、雑談もしながらそうした話が聞ければ、楽しいし仕事にも役立つよね。何年か後に市役所に戻った時も、施設で知り合った人とまたつながりができるかもしれないから、出先機関の経験も貴重だと思うよ」

 私「なるほど、分かりました」

 井上「ただ、ね?」

 私「ただ? 何ですか?気になります、教えてください」

 井上「やっぱり市役所で仕事をしたい、と思っている人も多い。出先機関は情報が少ないから煩わしいことも少ないけれど、欲しい情報も入りにくい。時々市役所に行って情報を仕入れてこないと、なかなか追いつけないこともある。ネットを見ても分からないこともあるから、周りが知っているのに自分が知らないと、ちょっと取り残された感じになるよね。必要な情報を取りに行かないといけないのは、少し大変かな。」

 井上「それと、やっぱり出先機関にも向き不向きがあるよね。もちろん市役所も向き不向きはあると思うけれど、公務員になりたいと思う人は市役所で働くことをイメージしている人が多い。でも、出先機関で仕事をすることもあるから、「イメージと違う」ということも起きやすくなるんだ。出先機関は職員が少ないし、時間も少し不規則だし、市役所と環境が大きく違う。市役所の仕事に慣れた人だと、出先機関に合わせるのが大変なこともあるかもしれない。人それぞれだけどね。僕は10年前に別の出先機関に配属されたことはあるけど、最初の1年は仕事を覚えるのと生活リズムを合わせるので少し大変だったかな。まあ1年で慣れたし、誰でも1回は出先機関に行くことになるだろうから、そのつもりでいた方がいいよ」

 私「分かりました。出先機関の仕事も大変だと思いますが、他ではできない経験を大切にしていきたいと思います」

 井上「そうだね。公務員は異動で仕事がコロコロ変わるけれど、別の課で得た経験が意外なところで活きることもあるから、それを大切にすると良いよ。」

 私「ありがとうございます。あっ、ご飯の前にいろいろ聞いてすみません(笑)」

 そう言って、持ってきた弁当を開け、自分の机で食べた。市役所と違って、静かな雰囲気だった。少し余裕も出てきたので、施設を出て周辺を散歩した。外の空気は気持ちが良かった。

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