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 市役所のインターンシップも無事に3日目の午後、大きなイベントの講演会も終え、女性活躍課の雰囲気もさっきまでの緊張感から、リラックスした感じになっていた。課の皆さんも笑顔で溢れている。

 せっかくだから、ここで気になっていたことを思い切って聞いてみよう。課の仕事も少し余裕ありそうな感じだし、まだ終業時刻まで時間がある。そして、いよいよ明日が最終日だから、聞くなら今しかない。聞いたら怒られるかな?と不安でもあったが、それでも聞きたいと思って聞いてみた。

 私「あの、こんなこと聞いて良いのか悩んだんですが、聞いても良いでしょうか?」

 井上「まだ時間もあるし、ここは女性活躍課で女性職員の話も聞けるから、ちょうど良いんじゃない? 知らないで不安になるよりも、知って安心した方がよっぽど良いよ。課のみんなも仕事が終わってホッとしているところだから、いろいろ教えてくれると思うよ」

 女性活躍課長「そうね。将来ある若い人にぜひ来てほしいから、どんどん聞いて」

 私「はいっ、ありがとうございます。じゃあ遠慮なく聞かせてください」

 井上「何だろう。ちょっとドキドキするなあ」

 私「やっぱり気になるのが、職場の人間関係です。実は今、飲食店でアルバイトをしているんですね。でも、先輩がかなり厳しくて、ちょっとミスをしただけでもすごく怒られるんです。この前は後輩が怒られて、アルバイトを辞めてしまったんです。確かにミスしたことは本人の責任だと思うので怒るのも仕方ないのですが、怒り方があまりにもきつくて、たぶんパワハラだと思います。公務員にもそんなことはあるんですか? せっかく試験勉強を頑張って公務員になっても、先輩とか上司との関係が上手くいかないと辞めなければいけなくなったら、何のために公務員になったのか分かりません。すごく気になるので、教えてください。」

 井上「答えるのが難しい質問だね。職場の人間関係は、確かにいろいろな話を聞くからね。公務員のパワハラもニュースで報道されているから、まったくないわけではないんだよね。説明が難しいなあ」

 私「そうなんですね。それがすごく心配で…」

 井上「職場の人間関係が上手くいかない理由は大きく3つあると思うんだよね。1つは、個人の性格。やっぱり気性の荒い人もいれば、ちょっとした注意で落ち込んでしまう人もいる。「相性」って言っても良いよね。友達なら相性の良い人を選べるけれど、職場はメンバーを選べないからね。相性の合わない人と一緒に仕事するのは誰でも大変だと思うよ。もちろん、パワハラは絶対良くないことだから、上司に相談した方が良いし、市役所の中にも相談窓口があるから、使った方が良い。パワハラをいったん受け入れてしまうと、相手もエスカレートする可能性があるからね。最初に言うべきことは言っておくべきだと思う。ただ、性格はすぐに直せるものではないからね。だから、相性の合わない人がいたら、できるだけ関わらないようにして、人事異動で変わるまで待つことも1つの方法だと思う。メンバーを選べないってことは、異動で必ずメンバーが変わっていくことでもあるから」

 私「分かりました。でも、パワハラの人って多いんですか?

 井上「財務省では「パワハラ恐竜番付」があるって記事を見たことがある。でも、市役所はほとんど聞かないよ。一概には言えないけれど。ねえ、課長?」

 女性活躍課長「そうね。やっぱり社会的問題になってきてるし、職員にも浸透してきているから。他の市役所の課長さんとも話しているけど、聞いたことないわ。基本的には良い人ばかりよ。私も含めてね(笑)」

 私「ありがとうございます。少し安心しました」

 井上「職場の人間関係が上手くいかないのは、個人の問題だけでなく世代もあるね。「ジェネレーションギャップ」って言うでしょ? 君も「近頃の若い者は…」って聞いて嫌な気持ちになったことがあるんじゃない?」

 私「あります。アルバイトのベテランの方も「最近の若い奴はちょっと嫌なことがあると、すぐ辞めるから困る」って言ってました」

 井上「そうだよね。僕もつい言っちゃうことがあるから、本当に気を付けないといけない。これは性格の問題じゃなくて、成長のプロセスが違うってことだろうね。自分が若い頃はここまで出来た、これだけ頑張った、いろいろ我慢した、だから今の自分がある、ってことだろうね。もちろんそれを否定するわけではないけれど、若い人も間違いなく成長している。先輩の時代とプロセスが違っているからと言ってそれを否定するのは良くないよね。しかも、先輩は良かれと思って後輩に助言しているから、これはちょっと厄介だよ」

 私「確かにそうかもしれません。自分のために言ってくれているから、「困る」とは言いにくいですよね?」

 井上「あまり強く拒絶すると、かえって人間関係をこじらせてしまうから、ここは笑顔で「ありがとうございます」と言って話を収めるしかないかな。ねえ、課長?」

 女性活躍課長「そうね。先輩はいろいろ教えてくれるから、何でも拒絶すると大切なことまで教えてくれなくなるかもしれないから、少し話におつきあいしながら適当に相づちを打っておくのが一番かもしれないわね」

 私「はい、ありがとうございます」

 私「最後に、仕事の内容も人間関係を決める大切な要素なんだ。仕事が忙しかったり、緊張感が続いたりすると、どうしてもみんなイライラしてしまうことがあるよね。こうした時に、ちょっとしたことで人間関係にヒビが入ってしまうこともある。家族とか友達でもそうでしょ? 受験勉強とか全国大会とかでもみんながピリピリしていると、ふだんは我慢できることができなくなって口論になることもある。それと同じように、市役所でもそういったことはあるんじゃないかな?」

 女性活躍課長「井上さん、すごく不安にさせているように言っているかもしれないけれど、実際にはほとんど問題ないと思うよ。基本的にみんないい人ばかりだし、チームプレーで助け合って仕事してるから、大丈夫。上司はとても気を使って、忙しい職場でも和やかに仕事ができるように工夫しているんだ。民間企業でもピリピリした雰囲気の職場はあるし、それこそ家族や友達でも人間関係の問題があるからね。それと比べて公務員が人間関係で難しいってことはないわよ。むしろ、他と比べたら人間関係で困らない方に入るんじゃないかしら?」

 私「そうですね。どこでも人間関係の問題はありますよね。でも聞いて安心できました」

 井上「課長、フォローありがとうございます。仕事の人間関係は仕事だけのことだから、「これは仕事だから」と割り切ることもできる。確かに心配はあるけれど、あまり心配しすぎても良いことはないよ」

 私「はい、ありがとうございます。他にも教えてほしいことがあるんですが…」

 井上「いいよ、この際何でも聞いて!」

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