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 公務員試験の勉強法に関する方はたくさん出ていますが、ほとんどの本は「過去問をとにかく解け!」と強調しています。これまで大学や高校の受験勉強を経験して来た人は、学校の授業で教科書を使って科目ごとの基本的な内容を身につけ、その後はドリルを使って基本的な内容を習得しているかどうかを確認し、さらにはさまざまなパターンの応用問題や受験する学校の過去問に取り組む、といったプロセスで勉強してきたと思います。そうした人にとっては、「公務員試験がなぜいきなり過去問で良いのか?」と疑問を感じるのではないでしょうか。疑問を感じたままで勉強を進めても、身につかないかもしれません。

 私自身、やはり「公務員試験の勉強は過去問をとにかく解け!」が大切だと思っています。しかし、その理由についてはあまり知られていないのではないでしょうか。そこで、今回は公務員試験の勉強ではひたすら過去問を解くことが必要な3つの理由を述べたいと思います。

 第1の理由は、公務員試験の目的です。公務員試験対策の最大の目的は、「合格すること」つまり「試験で合格点を獲得すること」です。大学や高校の勉強は試験に合格することももちろん大切なのですが、それ以前に各科目の基本的な素養が社会に出てからの生活に必須だから勉強するのです(作家の佐藤優さんも、高校の教科書を読むことを社会人に強く勧めています。私も学び直しの大切さを感じています)。しかし、公務員試験の場合はとにかく合格しないと、公務員としてのスタートラインに立つことさえできません。もちろん試験に出題される問題は公務員の仕事に必要な資質を見るものですが、だからといって科目ごとの学問的な体系を型を広く身につけることは努力の割に試験の合格を約束してくれません。つまりコスパが悪いのです。合格に必要不可欠なのは、問題に正解することしかありません。したがって、ここは割り切って合格することを大きな目標として、過去問にこだわることが大切です。

 第2の理由は、試験科目の幅広さです。高校入試では英数国社理の5科目、大学入試では共通テスト(旧センター試験)で5科目以上の勉強しなければなりません。それも確かに幅広いと思いますが、公務員試験はさらにそれよりも科目が多くなります。実務教育出版の「スーパー過去問ゼミ6シリーズ」はなんと23冊も出版されているのです。もちろんこれをすべてしなければいけないわけではありませんが、10冊以上の科目を勉強する必要があります。そうすると、1つ1つの科目を深く学ぶことは不可能に近いと言えます。最も効率的に合格を獲得するには試験の出題傾向をしっかり確認し、得点しやすい科目や分野を厳選して勉強することが大切です。そして、勉強の内容も過去問を中心にすることで負担を減らすことができます。

 第3の理由は、公務員試験の種類と出題形式です。公務員試験の種類は大きく分けて国家公務員と地方公務員の2種類、またそれぞれいくつかの区分があるので、多様な試験のチャンスがあり、高校や大学の受験でもチャンスが多いのでどちらも同じだと思います。しかし、公務員試験の大きな特徴は出題形式がどの種類でもほとんど同じことであるのに対して、高校や大学で出題形式が多様であることは大きく異なっています。公務員試験の出題形式は5つの選択肢の中から正解を選ぶ形が基本ですが、高校や大学の受験では全部マークシートで選ぶものもあれば、一部が記述式になっていたり数百字レベルの長文を書かせたりするようなものもあります。そのため、受験先の出題形式に合わせた個別の対策が必要になってくるわけです。この場合、過去問を解いて出題形式に慣れることはもちろん大切ですが、それ以前にどのような出題形式でも正解するために必要な基本的な能力を身につけることが必要となります。教科書で勉強することは、まさに基本的な能力を身につけるために必要になるのです。しかし公務員試験の場合は出題形式が統一されているので、こうした対策は必要ありません。とにかく過去問を解いて正解を稼ぐといった対策で十分なのです。

 他にも理由はありますが、ここでは割愛したいと思います。迷いなく過去問に取り組む心の準備ができれば、それでOKです。より詳しいことを知りたい方は、詳しい内容が電子書籍に書かれていますのでご覧ください。

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