それでは早速、地方公務員のインターンシップに参加してみましょう。ストーリー仕立てになっていますので、気軽に読んでくださいね。登場人物は「私」(地方公務員志望の大学3年生)と「井上」(30代後半の現役地方公務員で企画課係長在籍、インターンシップに訪れる学生のアドバイスを命じられた)の2名です。

 ここは、とある地方の市役所です。人口は6万5千人と小さな市で、地方らしいのんびりした雰囲気が魅力です。豊かな自然と程よい便利さが備わっていて、通勤時間も短くて済みますし、安い家賃で広めの家に住むこともできます。私は何となく公務員への就職を考えていたので軽い気持ちでインターンシップに参加してみることにしました(もちろん大都市の自治体でも内容はほとんど同じです)。

私は一通り自己紹介をした後、井上さんに次のように聞かれました。

井上「ところで、なぜ公務員になりたいと思ったの?」

私「それは…、不純と言われるかもしれませんが、何となく公務員がいいなあって思っていて」

井上「へえ、公務員にどんなイメージを持っているのかな? 民間企業とどんな点が違うと思う?」

私「安定していて楽だと聞いたんです。でも本当にそうなのかは分からなくて…、教えてください」

井上「正直でいいね。じゃあ僕も正直に話すね。確かに当たっているけど、それだけじゃない、ってところかな」

私「そうなんですか。詳しく教えてください。」

(解説)

 多くの学生がイメージする公務員の魅力は、最初はこのようなものでしょう。しかし、実際はそうとも言い切れない面もありますので、ここで詳しく説明します。

①公務員は雇用が安定している?
 公務員には身分保障があり、確かに安定していることは公務員の魅力の1つだと思います。民間企業にはない大きなメリットです。学生本人だけでなく、保護者の方が学生に公務員を勧めたり、結婚相手としても信頼が高いのも、安定が大きな要因と言えます。しかし、それ「だけ」で公務員になりたい、というのは好ましくありません。「公務員としてどんな仕事をしたいのか」を明確にしておかないと、仕事は続きませんし、納税者から見ても単なる「税金泥棒」となってしまいます。

②公務員は給料が安定している?
 これも公務員の魅力の1つだと思います。「人事院勧告」などで民間企業とのバランスが図られていますので、給料は決して高くないものの大きな変動はありません。景気が良い時もそれほど給料は上がらず、景気が悪い時もそれほど給料が下がらない、という意味での安定です。

③公務員は仕事の負担が少ない?
 「公務員は定時に帰れる」というイメージがあるようです。確かにそういった部署もないわけではありません。しかし、それは今や例外と言っても良いでしょう。深夜まで残業をしなければならない部署や、季節によって忙しかったり、そうでなかったりする部署もあります。
 また、公務員は数年おきに異動があり、10以上の部署を経験します。忙しい部署に配属される時も、忙しくない部署に配属される時が必ずあるのです。なお、全体として、公務員の仕事の負担も、以前よりは増えている印象があります。ただ、それは民間企業も同じかもしれません。

④公務員は転勤がない?
 地方公務員の場合は、都道府県や市町村の区域内に勤務することが圧倒的に多くなります。
 ただ、都道府県の場合は広いので、通勤時間が長くなれば引越が必要なこともあります。また、かなりレアケースですが区域外での勤務、例えば国や民間企業への出向などのため東京や海外で数年間勤務を命じられることもあります(家庭の事情など考慮される場合もあるようです)。
 地方公務員でも転勤が絶対ない、ということはありません。

井上「君の言うことは確かに当たっているけど、それだけじゃない、ってことも分かってくれたかな?」

私「はい、ありがとうございました。このインターンシップでいろいろな仕事を経験してみて、仕事の面白さも感じてみたいと思います。」

井上「そうだね。短い期間だけど、頑張ろうね。それが見つかれば、試験は大変だけどきっと乗り越えられるよ」

(解説)

 公務員試験は選抜が公正であることも大きな特徴です。

 民間企業への就職では面接が重視され、「学歴フィルター」の存在なども指摘されています。面接で「雰囲気が良かったのに落とされた」など結果に納得できないこともあるかもしれません。


 これに対して、公務員試験は試験による公正な競争で行われ、学歴フィルターもありません。一部例外はありますが、大卒でなくても大卒程度の試験を受けることができます。

 ただし、最近では面接もかなり重視されています。一次試験を突破することが条件ですが、多めに通しておき、面接は一次試験の結果を考慮せずに最終判定する機関もあるようです(リセット方式)。試験で高得点を稼いで逃げきる、という昔の(私がとった戦略でしたが)パターンは、少しずつなくなってきているようです。