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午後からは、女性活躍センターで講演会があるとのことなので、参加させてもらうことになった。テーマは「女性が地域で輝くために」というもので、講師の先生は各地でこうした講演をしている著名な方だという。なかなかこうした講演を聴く機会がないので聴きたいところだが、今回は運営する側として体験することになった。
既に講師の先生は応接室に来ていた。課長と課長補佐が入って、今日の進行や内容の確認などをしている。また、市の取り組みなどを説明しているようだ。講演会がスムーズに進むために、こうした確認は不可欠だ。
確認を終えた後、昼食の時間になった。すると、市長が秘書の案内で応接室に入ってきた。市で昼食を用意し、これから市長も同席して講師の先生と食事をとるそうだ。市長が同席しているということは、忙しい時間を割いてわざわざ来てもらったことに感謝の気持ちを込めて手厚くお迎えすることを意味しているという。もちろん、著名な先生なので、市の取り組みを市長も説明したいのだろう。時々、笑い声が聞こえてくるので、楽しそうな雰囲気のようだ。
私は応接室を離れ、会場の入口にある受付を体験することになった。職員全員で役割を分担して運営に当たっている。今日は全員がこの仕事に関わることになる。駐車場には整理係の担当職員が案内棒を振って車の誘導を行っていたし、会場への経路をアナウンスする職員もいた。受付は特に多く、「団体」「企業」「地区」「一般」など、さまざまな窓口に分かれていた。さまざまな立場で事前に申し込みのあった人を立場によって分けていた。受付では来た人を確認し、講演の資料や女性活躍に関係するパンフレットを渡した。私は「地域」の窓口で、資料を渡すのを手伝った。近所の人も来ていたので、知っている人がいてホッとした。
座る場所は自由だが、前方に「来賓」「関係者」の席が用意されていて、後ろの席には「報道」と書かれていた。市が招いた方は、席を用意しているようだ。来賓や関係者の方は職員が席まで誘導していた。
講演会の時間になった。席はほぼ埋まっている。市長が講師の先生と話しながら会場に入ってきた。課長はその後ろで見守っている。2人とも用意された席に座ると、いよいよ講演会の開始だ。課長が司会進行をするようだ。
課長「時間になりましたので、ただいまから女性活躍特別講演会を開催します。まず、市長がご挨拶を申し上げます」
市長「皆さん、こんにちは。今日は講演会の開催にこんなに多くの方々にお越しいただき、まことにありがとうございます…」
市長は挨拶を終えた後、次の仕事に向かうために会場を出た。お客さんも拍手で市長を見送った。秘書課の職員が同行し、運転手が待つ車に乗る。課長は司会をしているので、受付がほぼ終わり手の空いた職員が市長を玄関まで見送っていた。大きな行事は市長が来るので職員の緊張感も半端ないそうだ。
いよいよ先生の話が始まった。著名な先生で、さすがに話が上手く、しかも面白い。時々、笑いも起きていた。聞いている人の顔も生き生きとしていた。課長は司会の大仕事と市長が帰った後の解放感で、少し気が抜けたような感じに見えた。ただ、その後は先生の話を聞いて、誰よりも笑い、頷いていた。場の雰囲気を盛り上げるのも職員の仕事なんだろう。
講演が終わり、質疑応答になった。課長は次々と手が挙がる人の中から何人か選んで質問を受け付けた。時間の関係で全員が質問できず、後で指名されなかった人からクレームが出るかと心配になったが、課長はそういうことも考えて選んでいるのだろう。
講演会は盛況のうちに幕を閉じた。さあ、今度は帰る人への対応だ。次の企画のためにアンケートを取ったので、出口で職員が回収していた。駐車場では、帰る車の整理だ。また、ホールに並べた椅子や机の片付けも一斉に行われていた。
課長は講師の先生を応接室に案内し、しばらく懇談していた。先生は職員が用意したお茶を飲みながら、市民の反応が良かったことに満足していた様子だ。課長も感謝の気持ちを何度も伝えていた。15分ほどで先生が出てきた。タクシーが迎えに来ていたので、課長と私が出口で見送った。これで講演会も終わり、課長からようやく安堵の声が聞けた。
井上さんに聞いてみた。
私「講演会も大変ですね。こうしたことも多いんですか?」
井上「そうだね、特に女性活躍は、国が力を入れて進めているものだし、本来は企業や市民が主体的だから、市は国の政策をPRしたり、企業や市民が行動してくれるように促すのが仕事になる。だから、直接何かを提供するというよりも、意識啓発をすることが主な仕事になるんだ。講演会は有効な方法だから、定期的に行っているよ。」
私「それも大変な仕事ですね」
井上「やっぱり多くの人に来てほしいから、企画を考えたり、講師の先生を選んだり誰に案内するか検討したり、準備は大変なんだ。大きな講演会になると、準備は最低でも半年以上前から始まるよ。だから、当日は準備したことをとにかくしっかり実行していくだけ、みたいな感覚だね。とにかく準備が大切なんだよ」
私「でも、いろいろ決められるのは楽しいですね。自分が先生を選べるなら、せっかくだから好きな先生の話を聞いてみたいですし」
井上「そうだね。そういう提案は課長も聞いてくれると思うよ。終わった後の達成感もあるから、やりがいはあるかもね」
私「はい、ありがとうございます。」
こうして、講演会の体験も無事に終了した。
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